2015年7月12日日曜日
『過剰診断』の本を購入したら・・・
前回、がん検診における「過剰診断」を分かりやすく説明した図について、「用語集」のページで紹介しました。その図を提供したのは、"H. Gilbert Welch, Dartmouth Medical School"とクレジットされていました。
このウェルチさん、これまでにも健康情報を読み解く際の数字の見方などについて、とても分かりやすく説明した著作を出したり、さまざまなメディアに論文・記事を書いておられます。
調べたら、ウェルチさんの"Overdiagnosed"という著作が、昨年2014年12月に『過剰診断 健康診断があなたを病気にする』という邦題で出版されていました。
副題がちょっと気になったものの、読んでみようとさっそくポチッて、届いた本を見てビックリ。
というか、ショック。
なんと、帯に推薦文を寄せていたのが、近藤誠氏だったのです。
がんは、何をしても命を奪ってしまうがんか、ほっといても悪さをしないがんもどきの2種類しかないから、治療してもムダ、抗がん剤なんて命を縮めるだけ、という「放置療法」を勧めている人です。帯の文章も、「医療もビジネス。病人を増やすカラクリがよくわかる本」というものでした。
詳細は割愛しますが、わたしはこの方の説や患者さんへの接し方に不信感しか抱いておりません。
そもそも、がんは黒か白かで二分できるような単純なものではないはずです。前回の情報紹介にもあったように、「鳥」か「カタツムリ」か、だけでなく、「亀」も「熊」もいて、真っ白も真っ黒もない、濃いのから薄いのまで果てしなく広がるグレーの世界。
それが不安をあおる原因でもあるのでしょうが、グレーである、100%確実はない、という現実を見据えないと取り返しのつかないことになってしまいます。
「過剰診断」、「がん検診」についても同じで、どうも世の中の論調は絶対善と絶対悪に二分されがちです。それがいつも議論をややこしくしている気がします。
絶対善と見る人は、20代からマンモ検診を受けるべき、などと言ったりする。
絶対悪と見る人は、がん検診なんてムダ、今すぐやめるべきと主張する。
そんな黒か白かの極論ばかり声高に聞こえてくるなか、救える命を救う力があるはずのがん検診はなかなか実現されません。
ウェルチさんの本は、おそらくがん検診や健康診断を絶対善と見て検査を受けすぎている人たちに対する警告なんではないかと思います。・・・って、まだ読んでいないのですが。
本来は、書籍をご紹介するならちゃんと一読してからするべきですが、がん検診や検査についてのややこしさを見事に表していて、ほんとにショック、いい本のはずなのにこれでは一言二言添えないと紹介できないのがあまりに残念、というお話でした。
http://www.amazon.co.jp/dp/4480864342/
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